本日のブログは、スタッフIが美術展の鑑賞レポートをお届けします。
東京千代田区にある東京国立近代美術館において、2023年6月13日(火)~ 9月10日(日)の日程で開催の「ガウディとサグラダ・ファミリア展」を鑑賞してきました。
天才建築家、アントニ・ガウディの代表作「サグラダ・ファミリア」に焦点を当てた本展では、
100点を超える図面、模型、写真、資料に加え、最新の技術で撮影された建築映像も随所にまじえながら、
総合芸術としての聖堂の豊かな魅力に迫ります。
工事が絶えず行われていることから「日本のサグラダ・ファミリア」とも呼ばれる(?)横浜駅をふだん利用している身としては、勝手に親近感を抱いているサグラダ・ファミリア(^_^;)
そんな横浜駅も2020年に基本的な構造が完成。
そして当のサグラダ・ファミリアも2026年の完成予定に向けて着々と工事が進んでいます。
“未完の聖堂”と称えられながら140年の時を経て、いよいよ完成の時に向けて歩みを加速する、その魅力に迫ってきました。
「ガウディとサグラダ・ファミリア展」鑑賞レポート
- 第1章 ガウディとその時代
- 第2章 ガウディの創造の源泉
- 第3章 サグラダ・ファミリアの軌跡
- 第4章 ガウディの遺伝子
「ガウディとサグラダ・ファミリア展」は、4章に区切られて展開されています。
第2章・第3章のみ写真撮影が可能です。
スペインのバルセロナが生んだ天才建築家、アントニ・ガウディ(1852〜1926)。
1878年頃、建築家の資格を取得した直後の写真であろうこの1枚、ガウディと言えばこの写真が有名ですが、被写体として映ることを極端に嫌い、無帽の本人写真は5枚しか現存していないそうです。
ガウディが建築家を志してバルセロナ建築学校で学んだ19世紀の後半は、産業革命とそれに伴う都市人口の急増によって、ヨーロッパの都市がかつてない規模で変貌を遂げた時代。
近代化が推し進められ、芸術文化の領域でも前衛的なムーブメントが展開されたバルセロナにあって、ガウディの建築家人生も花開いていきます。
ガウディの才能は、西欧建築の歴史、異文化の造形、自然が生み出す形の神秘を丹念に研究することから独自の形と法則を生み出したところにあります。
「自然は私の師だ」と言うガウディは、徹底した自然観察から、植物をパターンとして外壁に採用するなど自然の中に潜む幾何学を建築造形へと応用していました。建築に呼応した家具デザインも行い、椅子ひとつをとっても人を受け止める柔らかい造形に加え、手に触れる部分に対して精巧なこだわりを見せていたほど。
貪欲な吸収・研究によって、既存から独創を生み出した発見の1つに「破砕タイル」手法があります。
割れた不良品タイルや故意に割ったタイル破片で壁を被覆するこの手法は、防水・防塵といった実用性に優れ、なおかつ建築を多彩色に表現することも同時に可能としました。
以後、この破砕タイルはガウディ建築を組成する手法となり、この手法が逆に曲面的な造形を促すことにもなりました。
この最終的な到達点がサグラダ・ファミリアの鐘塔頂華でもあるのです。
初代建築家フランシスコ・ビリャールが無償で設計を引き受けたサグラダ・ファミリアは1882年3月19日に着工しましたが、意見の対立から翌年にビリャールは辞任。
ガウディが二代目建築家に就任したのは、建築学校を卒業した5年後、1883年のこと。
ガウディは模型と、紐と錘を用いた実験道具を主に使ってサグラダ・ファミリアの構造を検討したとされています。
パソコンなどのコンピューターがなかった時代に、最適な曲線の造形をこうやって考え出していたんですね。
ガウディはサグラダ・ファミリア聖堂において、聖書の内容を表現する彫刻の制作に取り組むほか、
外観・内観の光と色の効果や、建物の音響効果にも工夫を凝らし、総合芸術の場として聖堂を構想しました。
ガウディと言えば、光と影を巧みに取り入れることで知られていますが、この聖堂内部の採光設計はまさにその真骨頂と言えます。
中央のほぼ直下から天井まで続く鉛直のラインが、自然な光を教会内部に取り込み、空間全体を神秘的でありつつも優しく包み込む独特の雰囲気を醸し出します。
また、美麗で巧妙に配置されたステンドグラスは、サグラダ・ファミリアが誇るクリエイティブな表現の一つと言えるでしょう。
緯度が高く太陽の光が弱い北欧では窓が大きく、緯度が低く光にあふれる南欧スペインでは窓が小さいのですが、サグラダ・ファミリア聖堂の窓は北欧並みに大きいため必要以上の強い光が入ってきてしまいます。
その光量を調節するのが大窓や高窓に設置されたステンドグラスであり、色彩豊かなガラスが堂内に彩りを与えるほか、朝日や午後の陽光が直射すると、驚くほどの明るさをもたらすのです。
どの角度から眺めても異なる魅力を感じさせるそのガラス絵画は、ガウディの色彩感覚と緻密性を存分に表現しています。
オリジナリティの塊で、天才と称されるガウディですが、ゼロから独創的な建築を創造したわけではありません。
「既に存在するものを発見し、そこから出発するのが人による創作だ。」と言い切り、人がゼロから創造することを否定しています。
ともすれば盗作だ、オマージュだ、インスパイアだ…とされ、ゼロから創造することが求められる“オリジナリティ”ですが、
それは幻想で、歴史や自然など“既にあるものから新しい何かを創り出す”ことが創造の本質なのだと気付かせてくれます。
デザイン制作を生業とする中で悩むことも多々ある僕ですが、あの天才ガウディでさえ「0→1で創り出すことはない」と言い切っていたこと。
ホッとします。
“自然”や“既存”の中から、いかにオリジナルを生み出していくか。
創造するポイントを間違うなという気づきを得た瞬間です(勝手に)。
ガウディの造形美と色彩感覚が絶妙に交わったサグラダ・ファミリアは、創造の源でもありました。
いつか直接この聖堂を体感してみたい…いつか必ず!
この記事を書いた人:スタッフI
「ガウディとサグラダ・ファミリア展」開催概要
■展覧会名
ガウディとサグラダ・ファミリア展
■ 会場
東京国立近代美術館(東京都千代田区北の丸公園3-1)→Googleマップ
■開催日時
2023年6月13日(火)~ 9月10日(日)
■開館時間
10:00〜17:00(金曜・土曜は10:00〜20:00)※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日、7月18日(火) ※ただし7月17日は開館
■ チケット料金
一般2,200円、大学生1,200円、高校生700円
※中学生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。
■ 公式サイト
https://gaudi2023-24.jp/
「ガウディとサグラダ・ファミリア展」巡回展情報
【東京会場】
東京国立近代美術館(東京都千代田区北の丸公園3-1)→Googleマップ
会期:2023年6月13日(火)~ 9月10日(日)
【滋賀会場】
佐川美術館(滋賀県守山市水保町北側2891)Googleマップ→
会期:2023年9月30日(土)~12月3日(日)
【愛知会場】
名古屋市美術館(愛知県名古屋市中区栄2丁目17-25)Googleマップ→
会期:2023年12月19日(火)~2024年3月10日(日)