前回のブログにてご紹介した「吉野公賀『絆シリーズ』全11作(1)」の後半をお届けします。
前回はこのシリーズ名『絆』というネーミングについてのご案内をさせて頂きました。我々はこのシリーズ名に恥じないよう、作品のご紹介に徹していかなければならないと日々感じています。 画商は画家の代弁者にすぎないのですが、画家不在の場では、重要な役割を果たさねばならない責任を担っています。
画家自身の伝えたいメッセージ、思い、描いた時の心境など…ひとつでも多くの代弁をするべく存在する私達が今できることは、資料作成、先生の思いのこもった言葉の整理、要約…など。長い期間、画商という仕事に携わっていても、誰かの代弁って、いつも難しい…そう感じていますが、今回は群を抜いて難しい。正直そう思っています。
各作品、原画を描いたのはみな違う時期です。最も古いもので、2006年5月です。今から約6年前です。手術の為、本格的に活動を再開したのが2004年。その後の2006年には海外のアートフェアに参加をし、大いに刺激を受け、アーティストとして羽ばたこうと輝きを増していった頃です。
画家といえど一人の人間。いい時もあれば、コンディションのすぐれない時もある。上手く描けない事が続き、思い悩む事もあるでしょう。しかしながら、吉野画伯は、一般的な悩みとは異なるものを持っています。それが病気の悪化です。この版画化された最初の作品を手掛けた後、ニューヨークでの初の個展を控えつつも、頼りにしてきた左目が悪化し、3度目の手術を受けることとなります。
…ですが、その時期もわずかずつではありますが、作品制作は続けていくのです。
この吉野公賀画伯は、様々な困難を乗り越えながら多くの作品制作を行ってまいりました。努力と継続の力。そして何よりも、絵画に対する熱い気持ちがなければ、ここまで続けてこれなかったのでは…と思います。
これら11作のシリーズは深いメッセージが込められています。吉野画伯は、これらの作品に登場する『樹』を『人』に見立ててストーリーを展開しています。その中には生命の誕生があり、出逢いがあり、自立があり、そして愛があります。そんなストーリーを聞きながら作品鑑賞をすれば、きっと優しさに満ち溢れた時間が過ごせるかと思います。
3月のギャラリーはそんな温かなぬくもりに包まれた空間を大切にしたいと考えています。
版画11作にプラス、幾つもの原画作品も手掛けています。機会あるごとに、これらの原画作品も公開していく予定です。一つのスタイルにこだわらないアートの形です。
また、今回の『絆シリーズ』の作品の売上の一部は画家の意向に伴い、寄付をしていく予定です。わずかな金額ずつではありますが、私共の出来る範囲で社会貢献ができれば…と決めました。まずは、一人でも多くの方にこれらの作品をご覧頂きたいと思っております。お近くにお越しの際は、是非お立ち寄り下さい。