新型コロナウィルスによる長期休廊からようやくオープン出来る歓びに満ちたこの瞬間に披露させていただく作品は、昨年、フジムラコンテンポラリーアートでデビューを果たしたばかりの作家Tone氏の最新作。
2020年の春、突如変わり果てた日々の生活の中で、ひたむきな制作姿勢を見せてくれたTone氏。
混沌とした毎日の中で「これからもアートは必要とされるのか?」「ギャラリーが再び、賑わう日が訪れるのか?」そんな不安が心を覆いつくそうとしているあの時期に、鑑賞者の皆様のお顔から自然と笑みがこぼれるような温かな作品を創ろう…そして、過去以上に豊かな心持ちになれる時間を生むことだけを信じて制作に勤しんでまいりました。
完成した作品シリーズは、“tender lights”と名付けています。 シンプルなモノクロの中に見える光と影の深い表現追及に、ため息が出るはずです。
2020年、夏の企画展『tender lights -Tone-』
今回の企画展タイトルは、『tender lights』。
”tender”とは、「柔らかな」「穏やかな」「微かな」といった意味を持ちます。
“lights”とは、「光」。
この2つの言葉を合わせて「柔らかな光」。
2020年夏の新作シリーズとなります。
コロナ禍で旅や自然を満喫することが少なくなったこの時期に、作品を通して「自然の中を歩く楽しさ」を感じていただければ…とTone氏自身が考えて下さいました。
「光と影」の効果がもたらすTone作品
森の中を散策すると感じられる、木々の間から漏れてくる光の輝き、爽やかに吹く風、香り…。
時として聞こえる鳥のさえずり。
風が葉を揺らすささやき。
森の中で感じられる自然の息吹は人が求めている大事な何か…。
窮屈な世の中と化した今は、その大切さを深く実感しますね。
長く続く絵画の歴史の中で、「光と影」は作家たちにとって重要なテーマでした。
“印象派時代”以前には室内でしか描かれなかった絵画も、窓から差し込む太陽の光やキャンドルの灯りでモチーフのどこに光が当たり、影が出来るのか?を常に観察しながら制作していました。
印象派が1つのムーブメントになったことは皆様もよく知ること。
画材を外に持ち出して燦燦と照る太陽の下で描き始めた作家たちは、それまでになかった新しい「光と影」を絵画に残そうとしていきます。
時代の中で変化していく画家たちの考え方と技術、表現方法などは現代でも同じです。
常に画家たちは探求し、最も美しい光を求めながら制作に挑んでいます。
「人が如何に光を好むか?そしてその裏には影があるはずだ」という定義。
どう表現すれば、人が陽だまりの中で過ごす快適さを絵画に表現できるのか?
この『tender lights -Tone-』展で見る「光と影」は「自然」を心地よく表現していますが、有名物故作家たちが残してくれた作品内では“光に反して存在する影の重要性”を複雑に指し示すことがあります。
「光と影」は、作品のモチーフを美しく正しく伝える事だけではなく、その絵画における意味を示唆し、複雑に意図する作家の思惑や作品注文者の何気ないサインや歴史に残るメッセージなどを秘め、製作されることがよくあります。
ダヴィンチの作品も、レンブラントも、モネやゴッホや、しいては現在大活躍中のバンクシーまで、多くの画家が作品内に様々なメッセージを込めています。
これは絵画の魅力の極みですね。
まさに「読み取るものが多い」絵画の深い世界です。
従来、この「光と影」を探求してきた画家たちは大抵「油彩画家」。
ですが、今展のTone画伯は油彩ではありません。
その辺りも直に鑑賞することで「発見する楽しみ」をご実感いただきたく思います。
創意工夫しながらライトアップを楽しんでいる写真を掲載させていただきました。
とても面白い効果が秘められています。
それに感動しているお客様☆
その一人であるTone氏も、自身の画材を研究し尽くし、どう「光と影」を表現するか?を考え抜き、今に至り、この個展を開催するまでとなりました。
ギャラリーで「自然の中を歩くような時間」を過ごしてみませんか?
素敵なアート散歩の時間になること必至です。
細かな筆致をルーペでご覧になるお客様。
ご来場される方の多くがこの行為に至る…素晴らしい環境です♪
まさに、非常に細かな筆使いを見極めるのか?が面白い企画です。
このタッチは、ありそうでない。
なかなか見かけない画風だと思います。
またギャラリーでは、「光と影」というテーマに沿ったライトアップも色々と試みています。
真夏、ましてや大きな窓のあるギャラリーにて、燦燦と照りつける太陽のもと、影ひとつない状態でライトアップするのは難しさ極まりない状況ですが…(=゚ω゚)ノ
企画展中は作家Tone氏も来場!
混雑を上手く避けながら、ご来場者様には作家自身のお言葉がお届けできるように工夫していますので、当企画展へご来店の際には可能な限り、事前にご連絡を頂戴できますと幸いです。
まさに小さな筆使いが遠くまで広がる穏やかな風景を生み出しています。
作家Tone氏もギャラリーに来場
会期中には、ギャラリーに作家Tone氏も来場。
作家、お客様含めマスク姿ですが、質疑応答が繰り返される大変に有意義なお時間となっています。
「画材は何ですか?」
「どんな風にその画材を使っているのですか?」
「この画材を使いたいと思った理由は何ですか?」
画面では作品がモノクロのシンプルなものに見えますが、大変に先の細かな画材を使っていますので、実際に目にするとかなり濃厚に塗り重ねてあるのが見えます。
そこがこの展示会の醍醐味の1つです!