2022年4月より開催となったK. Ashino新作発表『廻 -MEGURU-』展。
K. Ashino先生との【書芸術作品】公開展も、おかげさまで7回目を迎えます。
最新作『廻 -MEGURU-』展の開催に伴い、書道家・芸術家であるK. Ashino先生のアートエキシビションの魅力について迫ります。
「書の世界」をモチーフに展開されるK. Ashino展
ギャラリーというと、一般的に絵画の展示会がメインである空間を想像すると思いますが、K. Ashino先生の企画展では、多様な形状の作品が並びます。
魅力あふれる作品は、作家が歩む「書の世界」をモチーフに展開されます。
「書」と聞くと、少し近づきがたいイメージをもつ方もいるかもしれませんが、書道展と同じくモチーフになるのは「文字」です。
人類にとって昔も今も最も欠かせないツールである文字は、私たちとって「相棒」とも呼べる存在でもあり、もっとも身近な芸術のひとつです。
ネットやスマートフォンなど、デジタル上の文字を追うことが日常となる21世紀ですが、K. Ashino【書芸術作品】を鑑賞する際、それらが意思をもつ生き物のような存在に感じられ、数千年もの長い歴史の中で文字がいつも人の想像力と共に在ることに気付かされます。
過去のK. Ashino企画では芸術画廊という空間を最大限に活かし、日頃、深く知り得ない「書史」の楽しみ方を文化共有してきました。
時代・時代で遺され、人が生かしてきた文字。
K. Ashino先生は、歴史の中で生かされ意味を持たされ続けてきた「文字」を“有機物”や“生きた化石”として捉え、作品に昇華しています。
芸術家K. Ashinoの、バランス感覚や色彩感覚は、洗練された“書の道”で磨かれたものに他なりません。
フジムラコンテンポラリーアートとK. Ashinoをつないだ作品
オーナー藤村が、K. Ashinoのセンスを初めて見せつけられた作品が『彩書(さいしょ)』でした。
瑞々しく、生命感を伴う『彩書』作品。
色や形が、香りまで感じさせるような彩りの書から、平面であるはずの書作品に奥行きや躍動感を感じ、
この作品から、“文字の立体化”へのアートプロジェクトが始まりました。
彩り美しく、たおやかさをもったK. Ashino作品。
《藤》- 枝垂れる(しだれる)藤の花を漢字の「藤」で表現。
漢字を藤の花の“原型”に戻していくような作業で、着彩され、書され(描かれ)ます。
「ふじ」と詠んだとき、字形からその生命力まで発露し、文字が周りに纏う“情景”までも想像させられます。
連なる「藤」の数と、反転し“鏡文字”で書された「藤」の文字を探すのが楽しい一作。
[原点]時間というテーマ:ブロックアートの誕生
2014年からはフジムラコンテンポラリーアートとのプロモーション企画で、空間芸術作家としての才を発揮してきたK. Ashino先生。
写真左《水》 写真右《祥》
最新作『廻 -MEGURU-』作品を含む、これまで生み出されてきた全7シリーズの原点なるものが、『ブロックアート』です。
この『ブロックアート』から始まった“文字発掘”の旅。
オブジェの魅力である重量感、その「塊(かたまり)」感にも意識を置いたこの文字のオブジェは、古代文字や、まるで発掘されたヒエログリフのような神秘さも有します。
固められたブロックの内に見える、連なる色彩の点と点。
この“点”の動きは、書道家が極め続ける、文字の“軌道”を具現化したものです。
一筆で書される文字は、まさに瞬間の芸術。
原点でもあるこのブロックアートでは書の道に流れる時間(とき)-「瞬間」と「悠久」がテーマです。
「瞬間」と「悠久」。
人が感覚ではかる“時”というもの。
書家として鍛錬してきた筆の動き、計り知れないほど文字と向き合ってきた時間。
文字と向き合う時間の中には、現代も手本とされ続ける書作品を残した先人書家たちの想いも内包され…普遍性や永続性、堆積された【悠久の時】を感じる、とAshino先生は話します。
文字が書される、一瞬。
その『瞬間』の内に潜む『悠久』の時の深さを、奥行きをもって体現したものが、3Dとなったブロックアートなのです。
ここで、ブロックアート発表時にいただいた、K. Ashino先生の言葉を一部紹介します。
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文字の立体的な表現を模索していた時期の、三次元構築に関する謎掛けのような言葉との出会いがひとつの出発点となりました。
そして、そのあと目にした自然が生み出す驚くような「美」、異なる物同士が混ぜ合わされたときに起こる物理的性質による物質の振舞、行進曲のもつ複雑な音の厚み、それらの情報のさまざまな断片がひとつに集約され、これらの作品が生まれました。
文字であり、文字でないもの。
瞬間であり永遠であるもの。
平面では見ることのできない、点と点のあいだの世界に、観る人が在ってほしいと思います。
K. Ashino
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自然の光景を宿すK. Ashino作品
文字をモチーフにした作品シリーズの中で、不変の美…自然の光景を宿しているのも
K. Ashino作品の魅力です。
山水や、海底火山。
永久凍土を思わせるような層。
カナダにあるアブラハム湖と類似するようなバブル。
まるで薄氷のなかの銀河。
自然美は、ブロックアート発表時から作家が大切にしてきたテーマでもあり、当ギャラリーの根幹にもある芸術作品で魅せたい「美」の普遍性です。
K. Ashino作品の、深みを醸し出す色彩と形状は、画材や具材から成るもの。
墨の黒はじめ、日本古来の絵の具、「岩絵の具」や「雲母」などの鉱物を多く色彩として取り入れているのも、【和】をテーマにしたフジムラコンテンポラリーアート企画の魅力です。
日本画材 – 岩絵の具についての作品は、のりゆき 画業50周年記念『玄 -gen-』の記事でもお楽しみいただけます♪
K. Ashino展の魅力
K. Ashino展の最たる魅力は【和】の教養があること。
日本人の心の機微や、感性のベースにもなった「国風文化」を感じられる企画であるとともに、我が国の風土や美的哲学を追える…まさに、わびさびが何かを紐解く魅力満載の企画です。
『風情』-四季の移ろいを尊ぶような色彩からも、風情を感じられます。
鑑賞者が一文字からさまざまな景色を想像する…そういったエキシビジョンを、いつも目指してきたK. Ashino展。
「文字ひとつでここまで語れるものか」と、その深度に驚かされます。
2022年、K. Ashino最新作シリーズ『廻 -MEGURU-』は、作家とフジムラコンテンポラリーアートとの原点である、このブロックアート作品にも回帰します。
文字が生まれ継承されてきた数千年もの時間と、それぞれの字に想いを乗せた人々の時間の堆積を、本展で多くの方へ橋渡しし、継いでいけたらと思います。
この記事を書いた人:スタッフH
K. Ashino新作発表展『廻 -MEGURU-』開催概要
K. Ashino新作発表展『廻 -MEGURU-』展示販売会
■会期
2022年4月1日(金)~6月30日(木) → 11月30日(水)まで会期延長 12:00〜18:00
定休:月曜・火曜
※祝日は開廊し、翌日休廊となります。
■会場
フジムラコンテンポラリーアート
〒231-0861 神奈川県横浜市中区元町2-91-11 イエダビル2階
アクセスについて→