本日のブログは、スタッフIが美術展の鑑賞レポートをお届けします。
横浜駅東口にあるそごう美術館にて、2023年9月16日(土)~11月5日(日)の日程で開催の「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」を鑑賞してきました。
本展では、世界各地の歴史や文化を反映し発展したアーツ・アンド・クラフツ運動の歩みを、テキスタイルや壁紙・家具・金工など、約170点の作品を通じて紹介しています。
「アーツ・アンド・クラフツとデザイン」鑑賞レポート
19世紀後半にイギリスで興ったアーツ・アンド・クラフツ運動とは、一言で言えば「手仕事の美を追求する運動」。
産業革命以降、大量生産・大量消費の潮流によって急速に失われつつあった手仕事による制作活動を取り戻すこと、さらには、生活と芸術が一体化することを目指しました。
ウィリアム・モリス
中心人物となったウィリアム・モリス(1834-1896)やジョン・ラスキンなどの先人たちによって主導され、その思想はデザイン、建築、芸術と多岐にわたり、そしてその影響力は世界各地へと広まります。
手仕事にこだわるモリス、その中でも顕著だったのが、このインディゴ染め。
化学染料に驅逐されて忘れられていたインディゴ染めを苦労して復活、名前のかわいらしさも人気に拍車をかけた《いちご泥棒》や《兄弟うさぎ(白)》が生み出されました。
本展ではモリスに代表する、自然の美をデザインに取り入れテキスタイルなど、シームレスなパターンデザインが多く飾られていましたが、ラファエル前派が好んだ物憂げな女性や鳥などのモチーフを繊細な筆致で描いたウォルター・クレインの作品は、“絵画作品”然として存在感を放っていたように思います。
ウォルター・クレイン
植物のS字曲線がアール・ヌーヴォーを予見しているとも言われている《孔雀》。
約160年前に多色刷りでこの精緻さを表現できる卓越した技術と先見性は驚嘆に値します。
“デザイン”がメインの本展なので、各作品ともにシンプルな額装が並ぶ中、“絵画として完全武装な額装”とも思えるクレインの作品《夏》は個性的でした。
写真でお見せできないのがもどかしい…。
フランク・ロイド・ライト
アメリカでは、建築家フランク・ロイド・ライト(1867-1959)らもアーツ・アンド・クラフツ運動に参加。
アメリカ特有の風土や建築環境を重視し、ヨーロッパのデザインを模倣するのではなく新しいデザインを生み出そうとする運動は新たな展開を見せていきました。
モリスが伝統的な技法や素材の利用を重視したのに対し、フランク・ロイド・ライトはさまざまな素材を機械で直線状に制作することの重要性を語り、より幾何学的なデザインへと向かっていきます。
世界各地に広まった、アーツ・アンド・クラフツ運動。
手仕事の復興を目指したアーツ・アンド・クラフツ運動は、美術や工芸、建築だけにとどまらず、産業や人々の生活文化にも影響を与え、その思想は現代の日本にも息づいています。
この記事を書いた人:スタッフI
「アーツ・アンド・クラフツとデザイン」開催概要
■展覧会名
アーツ・アンド・クラフツとデザイン
ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで
■ 会場
そごう美術館(神奈川県横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店 6階)→Googleマップ
■開催日時
2023年9月16日(土)〜2023年11月5日(日)
■開館時間
10:00〜20:00
※入館は閉館30分前まで。
※そごう横浜店の営業時間に準じ、変更になる場合があります。
休館日:会期中無休
■ チケット料金
一般1,200円、大学・高校生1,000円、中学生以下 無料
■ 公式サイト
https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/
※当記事の一部写真は、PR TIMESから引用しています。
「アーツ・アンド・クラフツとデザイン」巡回展情報
【神奈川会場】
そごう美術館(神奈川県横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店 6階)→Googleマップ
会期:2023年9月16日(土)〜2023年11月5日(日)
【山梨会場】
山梨県立美術館(山梨県甲府市貢川1-4-27)Googleマップ→
会期:2023年11月18日(土)~2024年1月21日(日)