【東京両国 刀剣博物館】日本刀の材料を初めて知った刀剣展体験レポート

本日のブログは、スタッフIが美術展の鑑賞レポートをお届けします。

東京両国にある刀剣博物館の外観写真

刀剣の歴史や美術に興味を持つ人々にとって必見のスポット、東京両国の「刀剣博物館」に行ってきました。

東京両国の旧安田庭園内にある刀剣博物館の常設展示

日本国内でも数少ない日本刀専門の博物館で、刀剣の歴史、文化、および職人技について学ぶことができる貴重な場所であり、近年では国外からも数多くの観光客が訪れる場所でもあります。

東京両国にある旧安田庭園内の写真
旧安田庭園

回遊式庭園「旧安田庭園」の敷地内にあるため、博物館鑑賞の前後で自然に触れて“のんびり時間”を過ごせるのも魅力でした。

両国国技館の外観写真
両国国技館

相撲の聖地「両国国技館」が近くにあったり、

隅田川の写真
隅田川

目の前には隅田川が流れていたりと、周辺スポットとあわせて巡ってみるのもおすすめです。

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目次

東京両国 刀剣博物館の魅力

東京両国にある刀剣博物館の外観写真
刀剣博物館

刀剣愛好家から寄贈された作品や、愛好家が保管と管理を依託した刀剣や刀装具を収蔵・展示している刀剣博物館。

もとは1968年、渋谷区代々木4丁目に開館(2017年3月末に閉館)したそうですが、2018年1月に墨田区横網(よこあみ)1丁目の旧安田庭園内、両国公会堂跡地に移転し、再オープンした経緯があります。

日本刀の歴史を学べる常設展示

東京両国の旧安田庭園内にある刀剣博物館の常設展示
1階:常設展示室
東京両国の旧安田庭園内にある刀剣博物館の常設展示

刀剣博物館には、日本刀の歴史を深く学ぶことができる常設展示エリアがあります。

東京両国の旧安田庭園内にある刀剣博物館の常設展示

ここでは、日本刀の誕生から現代に至るまでの歴史を詳しく紹介。

展示は、時代ごとの刀剣の特徴や製作技術の進化を詳述しており、訪れる人は時を遡るような体験ができます。

東京両国の旧安田庭園内にある刀剣博物館の常設展示
東京両国の旧安田庭園内にある刀剣博物館の常設展示

また、名刀の実物を見ることができ、その美しさや精巧さ、時代を生き抜いてきた生々しさに驚かされます。

東京両国の旧安田庭園内にある刀剣博物館の常設展示

刀剣がどのようにして日本の文化に根付いたのか、そしてその背景にある職人たちの情熱についての理解を深めることができる貴重な情報源です。

刀剣博物館のカフェとグッズショップ

東京両国の旧安田庭園内にある刀剣博物館のカフェ写真

刀剣博物館内には、見学の後にゆっくりと休憩できるカフェや、刀剣に関するグッズが購入できるショップも設置。

カフェでは、刀剣をテーマにしたメニューや、ここでしか味わえない特製スイーツが楽しめます。

また、訪れた記念として刀剣にちなんだグッズや書籍などを購入できるショップも一角にあります。

旧安田庭園

東京両国の旧安田庭園
旧安田庭園

元禄年間(1688~1703年)に大名庭園として築造され、のちに隅田川の水を引き入れ、潮の干満によって変化する景観を楽しむ潮入回遊庭園として整備されました。

旧安田庭園の園内マップ

園内中央には、「心」の字をかたどった心字池(しんじいけ)が配置されています。

東京両国の旧安田庭園内にある刀剣博物館の写真
心字池
奥に見えるのが刀剣博物館

明治になって旧備前岡山藩主池田章政侯爵邸となり、1891年には安田財閥の創始者である初代安田善次郎の所有となりました。

旧安田庭園の亀
近寄っただけで「食うモノあるんだろ?」と近寄ってくる亀さんたち

かつて隅田川から取水していた池は、隅田川の水質悪化以降、取水を取りやめ、現在では、園北側の地下貯水槽(貯水量約800トン)を利用した循環浄化装置を設置し、人工的に潮入が再現されています。

東京両国の旧安田庭園の入口
西門

また旧安田庭園以外の土地は、現在、同愛記念病院と安田学園、横網町公園となっています。

東京両国の旧安田庭園
西門から入った小道

園内には人も喧噪もなく、緑・自然を満開で浴びられます。

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第28回 特別重要刀剣等新指定展

刀剣博物館では定期的に特別展が開催されており、普段は見られない貴重な刀剣や関連資料が展示されます。これらの特別展は、特定のテーマに基づいて企画されており、日本刀の奥深い世界にさらなる理解と興味を持たせる内容です。

今回は、2024年度の特別重要刀剣等審査において新たに指定された作品の展示「第28回 特別重要刀剣等新指定展」を鑑賞してきました。

東京両国の旧安田庭園内にある刀剣博物館の3階展示室
3階展示室

3階の展示室前には、建仁寺の俵屋宗達「風神雷神図屏風」を書で表現したこともある、金澤翔子さんの作品が堂々と鎮座。

刀剣博物館に飾られている金澤翔子さんの作品
『宝刀』

伝家の。
威風堂々と。

【写真撮影について】展示室内は写真撮影NGでした。

日本刀の原材料は何で作られている?

刀剣博物館には、刀剣の知識ゼロで行きました。
それこそ「刀って何でできているんだろう?」というところから(-_-;)

玉鋼(たまはがね)の写真
玉鋼(出典:日本刀の基礎知識II)

日本刀を作るときには「たたら吹き」で作られた、「玉鋼(たまはがね)」という鋼(はがね)が使われるそうです。

東京両国の旧安田庭園内にある刀剣博物館の常設展示
たたら製鉄の様子

たたら吹きとは、熱した炉(ろ)に砂鉄と木炭を入れて和鉄(わてつ)を作る製鉄方法で、鉄の純度が高い玉鋼という和鉄ができます。

刀を作る工程の様子
玉鋼(出典:日本刀の基礎知識II)

鉄は含んでいる炭素量でその性質が決まりますが、玉鋼は日本刀を作るのに最適な炭素量で不純物も少なく、日本刀には欠かせない材料なのだそうです。

そこから鋼を鍛えていき、刀身を作り、研ぎ、鐔(つば)や鞘(さや)まで作り上げていくとなると…想像をはるかに超えた職人技の連続でした。

特別展の魅力と見どころ

刀剣展を初めて鑑賞して印象的だったのは、刀剣を評価するその独特な表現方法。

例えば重要美術品、国村の太刀を解説した一文。

地刃(じは)の沸(にえ)が一段と強く鍛え(きた)が肌立って(はだだって)地景(ちけい)が入り、刃中(はちゅう)に金筋(きんすじ)、砂流し(すながし)等を頻り(しきり)に交えた作域となる。

専門用語の雨嵐。
高校時代の古文・漢文より意味が分からない…((+_+))

刀の刃紋の種類
(出典:日本刀の基礎知識II)

グッズショップで購入した日本刀の基礎知識本を読んだりインターネットで検索してから、ようやくぼんやりと意味が分かりました。奥が深い…深すぎる。

そもそも個性のある刃紋は、鋼を鍛えているときに自然に出るものと思っていました。

実際はそうではなく、焼刃土(やきばつち)を刀身に置いてから焼き入れをすることで生じる、“人工的な”模様なのだそう。

刃紋を出す作業の様子
(出典:日本刀の基礎知識II)

刃紋の仕上がりを予想しながら置き土していくという、知識と経験と想像力が試される模様づくりです。

刃紋の種類
(出典:日本刀の基礎知識II)

いろいろな刀を鑑賞した結果、個人的には、スーッとまっすぐに走る直刃(すぐは)がお気に入り。凛々しさ・猛々しさを感じます。

本展で最も印象に残ったのは、特別重要刀装の黒漆鞘太刀拵(こくしつさやたちこしらえ)

黒漆の1トーン。
細部まで黒一色の装飾が施され、独自色の個性を出しつつも実用性を重んじた、“実戦のリアルなオーラ”をひしひしと感じました。

南北朝時代、西暦で言うと1300年代、今から約650年ほど前に作られて、実戦で使用されていたと思うと伝わってくる生々しさが違いますね。

写真でお見せできないのが残念…!

生々しさと鋭利な緊張感が漂う刀剣展示の中に、ほんわかとたたずむ宮本武蔵 筆の《眠り布袋図》も良かった。

放下身心忘自性
暫支両手午睡軽
布囊柱杖渾閑刼
夢満天宮呼不驚

(意訳)
心身を捨て去り、自身のことさえ忘れ去るしばらく両手で頬杖を突き、午後のひと時うたたねをする
布袋も柱杖もその辺へ捨て置く
夢は果てない空のように満ち、声をかけられようと動じな


(解説)
武蔵の絵のほとんどは筆数が少なく、線の強弱・墨の濃淡・余白のバランスで構成され、無駄を省いて一気に描き上げるのがその特徴といえる。
武蔵が達磨と並んで多く描いたのが布袋である。布袋は中国唐時代の名僧で、人々は弥勒菩薩の化身として尊び、のちに禅僧たちの恰好の画題となっている。

ひしめく刀剣展示の中に、唯一の紙本墨画というのが象徴的でもありました。
関連展示もおもしろいですね。

初めての刀剣展示で感じたこと

東京両国にある刀剣博物館の外観写真

初めて行った刀剣博物館。
2時間くらい滞在し、約40名ほどいた来館者は僕以外全員外国の方でした。

数百年前に作られて実戦で使用されていた必需品は、海外の人に興味を抱かせるほど歴史的な芸術品にもなっていることを感じます。お金をいくらかけても作れない“歴史”は唯一無二です。

国宝 太刀 銘 延吉
国宝 太刀 銘 延吉
※本展での展示作品ではありません

刀身は刀工の個性がにじみ出る部分のため配色という意味の派手さはありませんが、色をふんだんに使える鍔(つば)や柄(つか)、鞘(さや)はパッと見で、色の個性を楽しめるおもしろさがあります。

金に重きを置くのは分かるけども、金以外の派手な色も当時の人は好んだりするんだ、と思ったり。

当時を生き抜く人たちが、鞘(さや)に螺鈿、馬具に蒔絵を装飾であしらったりすることは、必需品とは言え独自性を求めた嗜好品としても捉えていたのだと思います。

本展にも、金具が金無垢(きんむく)だったり、這龍(はいりゅう)や波濤(はとう)、家紋を彫り込んだような重厚な“作品”も多くありました。

東京両国の旧安田庭園内にある刀剣博物館の常設展示

そうです、もはや完全なる作品。

当時も名工による作品だったことに違いはないですが、そこに紆余曲折の長い歴史がのっかってくることで、日本の伝統的な造形美術作品として未来永劫、残っていくはずです。

また、同じ刀でも刀工それぞれの個性が現れることを考えると、刀工の一派は“絵画様式”とも言えるのかもしれませんね。

初めてのことが多すぎていろんな楽しみ方ができる刀剣博物館、また別の展示会に行ってみたいと思います。

この記事を書いた人:スタッフI

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刀剣博物館 施設概要

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