“光の画家”の集大成「モネ 睡蓮のとき」国立西洋美術館で睡蓮にひたってきました

本日のブログは、スタッフIが美術展の鑑賞レポートをお届けします。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の看板写真

印象派を代表する画家のひとりであるクロード・モネ

東京上野の国立西洋美術館で、“光の画家”集大成となる、晩年の制作に焦点をあてた「モネ 睡蓮のとき」展が、2024年10月5日(土)~2025年2月11日(火・祝)の日程で開催されていたので鑑賞してきました。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の看板写真

世界最大級のモネ・コレクションを誇るマルモッタン・モネ美術館より、日本初公開作品7点を含む、厳選されたおよそ50点が来日。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の看板写真
国立西洋美術館所蔵《睡蓮、柳の反映》

さらに、日本各地に所蔵される作品も加え、国内外のモネの名作が一堂に集結する、日本では過去最大規模の《睡蓮》が集うモネ展となります。

【写真撮影について】本展は写真撮影不可ですが、第3章「大装飾画への道」のみ写真撮影OKです。

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目次

モネ 睡蓮のとき(国立西洋美術館)鑑賞レポート

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の場外チケット売り場に並ぶ人の写真

今回鑑賞したのは、平日水曜の朝9時30分。
平日にもかかわらず美術館外のチケット売り場に、これほど多くの人が並んでいるのは初めて見ました!

事前にオンラインでチケットを購入しましたが、入場する際も少し並び、グッズショップも外まで列が伸びていましたね…。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真

当然ながら美術展の館内もたくさんの人。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真

コロナ禍以降では一番多かった。
入場まで1時間30分も並んだ、2017年の『アルフォンス・ミュシャ展』には及びませんが…( ノД`)。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真

本展では、モネの代表作とも言える「睡蓮」シリーズを中心に、モネ芸術の真髄に迫る本展は、全4セクション+エピローグ、67作品が展示されています。

  • 第1章 セーヌ河から睡蓮の池へ
  • 第2章 水と花々の装飾
  • 第3章 大装飾画への道
  • 第4章 交響する色彩
  • エピローグ さかさまの世界

モネ最後の挑戦-“光の画家”集大成となる晩年の制作に焦点をあてており、モネ晩年の最重要テーマ「睡蓮」の作品20点以上が展示。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真

2mを超える大画面の《睡蓮》に囲まれて、モネの世界にひたる、本物の没入体験も見どころです。

クロード・モネの写真
Nadar, Public domain, via Wikimedia Commons

光と色彩の魔術師、クロード・モネ(1840-1926)。

自然と光を描き続けたモネの作品群は、時を超えて鑑賞者の心を惹きつけ、穏やかな水面に浮かぶ睡蓮が紡ぎ出す夢のような世界へと誘います。

クロード・モネの《陽の当たるポプラ並木》作品写真
《陽を浴びるポプラ並木》1891年
『自然と人のダイアローグ展(国立西洋美術館)』にて撮影(2022年)

19世紀の終わり、西洋美術に大きな影響を与えた日本の浮世絵は、モネにもその限りではありませんでした。

葛飾北斎の《冨嶽三十六景 東海道程ヶ谷》と同じような構図で描かれた《陽を浴びるポプラ並木》では、浮世絵の影響が顕著に見てとれます。

木が縦に走り、並木道の風景を斜めに切り取った構図は、当時の西洋絵画ではあまり見られなかった大胆な切り取り方・遠近法でした。

睡蓮への道

1890年、50歳を迎えたモネは、7年前から住んでいたノルマンディー地方の小さな村ジヴェルニーにある土地と家を購入し、そこを終の棲家としました。

1893年、自宅の庭に隣接する土地を新たに購入し、セーヌ川の支流から水を引き込んで睡蓮の池を造成します。

池の拡張工事を経た1909年までに制作された《睡蓮》の連作およそ80点では、モネの視線は周囲の風景から“水面”へと移り、やがて水平線のない水面とそこに映る反映、そして光と大気の効果だけが画面に広がるようになっていきました。

大装飾画への道

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真
第3章のみ写真撮影可能です

「大装飾画(Grande Décoration)」とは、睡蓮の池を描いた巨大なパネルによって楕円形の部屋の壁面を覆うという、モネが長年にわたり追い求めた装飾画の計画です。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真

本展の第3章では、睡蓮の絵で壁面を埋め尽くした楕円形の部屋が設置されており、《睡蓮》の大きな装飾画を体感することができます。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真
《睡蓮》1916年
国立西洋美術館

日本の実業家であり、国立西洋美術館のコレクションの礎を築いた松方幸次郎は、1921年にジヴェルニーのモネの自宅を訪れ、直接モネ本人から18点ほどの作品を購入しました。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真
《睡蓮、柳の反映》1916年
国立西洋美術館

本作《睡蓮、柳の反映》もその一つで、大装飾画の関連作品を手放すことを嫌ったモネが、生前に唯一、売却を許可した装飾バネルです。

さらにこの作品は、1923年、関東大震災の被災者のためパリで開かれた展覧会にも出品されました。

しかし、モネはこれを知ると抗議し、すぐに作品の展示を中止させます。
第二次世界大戦を経て、長らく行方不明となっていましたが、2016年にルーヴル美術館で、画面の大部分が破損した状態で再発見。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真
赤い絵の具で記されたサイン

モネは作品の左下にサインをすることが多く、本作もそのサインによってモネの作品と確認されました。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真
《睡蓮、柳の反映》1916-1919年頃
マルモッタン・モネ美術館

1909年までに制作された《睡蓮》の連作およそ80点では、モネの視線は周囲の風景から“水面”へと移り

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真
《睡蓮、柳の反映》1916-1919年頃
マルモッタン・モネ美術館
国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真
《睡蓮》1917-1917年頃
マルモッタン・モネ美術館

やがて水平線のない水面とそこに映る反映、そして光と大気の効果だけが画面に広がるようになっていきました。

また、水面に映る雲の姿は、モネの風景画において初期から頻繁に描かれていましたが、《睡蓮》シリーズに限ると、1909年以前の作品ではほとんど見られません。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真
《睡蓮》1914-1917年頃
マルモッタン・モネ美術館

しかし1914年以降の大装飾画の制作では、このモティーフは池の周囲に植えられた枝垂れ柳とその反射像とともに、きわめて重要な位置を占めるようになります。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真
《睡蓮》1916-1919年頃
マルモッタン・モネ美術館

そうすることでモネは、水面の上で天地が一体化したかのような効果を強めたかったのだろう…と解説されていました。本作《睡蓮》でも、力強く自由なストロークで木と水と空が一体に描かれ、一つの小宇宙を表現しています。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真
《睡蓮の池》1917-1919年頃
マルモッタン・モネ美術館

ドラスティックな色彩 色彩の交響曲

1908年頃から現れ始めた白内障の症状は、晩年のモネの色覚に大きな影響を与えることとなりました。

視力の悪化が進む中で絶えず苦痛を感じながらも、彼は1923年まで手術を拒み続け、絵具の色表示やパレット上の位置を頼りに制作を続けたといわれています。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真
《睡蓮、柳の反映》1916-1919年頃
マルモッタン・モネ美術館

これらの作品は、視覚が不確かになる中でも衰えを見せなかったモネの創作意欲と、経験に裏打ちされた色彩への実験精神を今に伝えています。

“色が燃えて”いるような錯覚に陥るのは、目の病気や第一次世界大戦からくる混乱も影響しているのでしょうか。

これまであたりまえに見てきた世界が視界から消えていく恐怖、光を渇望する「もがき」、実像と虚像の境がない現実世界の混沌がキャンバスに憑依している、そんな作品たちでした。

力強い筆致と鮮やかな色彩、絵肌はゴッホ作品を彷彿させ、これらの作品は1950年代のアメリカで台頭した抽象表現主義の先駆とみなされ、晩年のモネの芸術が再評価される契機ともなっています。

会場内は、一部写真撮影OK

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真

本展では、第3章の展示室内に限り、すべての作品の写真撮影が可能です。

ただし動画撮影やフラッシュ撮影、自撮り棒などは禁止です。

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モネ 睡蓮のとき(国立西洋美術館)まとめ

睡蓮に焦点をあてている本展で個人的に好きだったのは、睡蓮ではなく…

生成りのような背景にエメラルドグリーンのようなワントーンで描かれた《チャーリング・クロス橋》。

国立近代美術館で開催の「ゲルハルト・リヒター展」に飾られている《風景画》の作品写真
ゲルハルト・リヒター《ユースト(スケッチ)》2005 油彩・キャンバス

むかし行ったゲルハルト・リヒター展で、圧倒的な存在感を放つビルケナウなどの巨大作品の中でも、引きつけられたのは、モノトーンで描かれた《ユースト》でした。

最低限の配色が生み出す静かな表現にこそ、特別な魅力を感じずにはいられません(*^-^*)

“五感でひたるモネ”がコンセプトのグッズたち

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真

モネの“色が燃えて”いたあの頃のように、グッズ売り場の現実世界も混沌としていました。

売り場への入場は制限され、美術館外にまで続く列。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真

そもそも国立西洋美術館の展覧会用グッズショップは売り場面積がせまく、ギッチギチの中で「あ、もう一回あのグッズを見てみようかな」と戻ろうもんなら、押し戻されてしまうほどの混雑ぶりでした。

確保したグッズが潰されないように、胸元に抱えて急いでレジへ。

国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」の館内写真

混雑する美術展は苦手ですが、これほど多くの人が「アート」に引き寄せられるということは、日本の鑑賞市場は明るいとも言えるのでは。

あとは、作品を所有する購入市場も賑わって欲しいところです。

この記事を書いた人:スタッフI

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モネ 睡蓮のとき(国立西洋美術館)開催概要

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