FCA注目のアーティスト“スティーブ・ホールマーク”に迫る!
本日は、アメリカアリゾナ州セドナ在住の世界的に有名なスカルプチャー(彫刻)作家の紹介です。世界的に有名と単純に表現してしまいましたが、何が?どう?彼とその作品達が世界的な評価を得たのか?
私達画商に、力があり、信用、信頼ができ、縁を感じ…それでも世界的に評価を得ている作家との出逢いは非常に稀で、運の無い画商は画商人生が終わるまでに一人としてそのような作家との出逢いが無いことも多々あります。そこで、普通は運のある画商さんがプロモートした作家さん達の作品を卸してもらい、自分たちのお客様に販売するのが、世界のギャラリーの常識となってます。
しかし私のギャラリー、フジムラコンテンポラリーアートは“本物の芸術、美術とは?”を、テーマに力のある新鮮な作家を直接世界中から日本に輸入、作家の真の代弁者として日本のコレクターの皆様方に紹介することを目的に日々スタッフ一同鍛錬に鍛錬を重ね、画商の審美眼(触角)を磨いております。その甲斐があってかどうかはわかりませんが、運良く一人と言わず数多くの作家さん方から信用と信頼、そして一番大切な縁があることを気付かせてもらえるチャンスをいただくことが出来ております。
本日紹介のこの作家スティーブ・ホールマーク氏もかなり強い縁を感じたアーティストでした。なぜなら、出会って3~4時間の会話の後には不思議な程、信頼関係を結べる感覚を持てた作家なのです。
「なにが私の心を打ったのか?なにが私を夢中にしたのか?」
このハプニングとも思える出逢いは私の第二の故郷ともいえるアメリカ・ニューヨークで起こったのです。私は十数年ニューヨークに住んでいました。メトロポリタン美術館のガイドも含め、アートに携わり生きてきましたが、ニューヨークアートエクスポ(世界最大規模の美術の祭典)は数ある祭典の中でも一番の規模を誇るもので世界中の著名なギャラリーや作家たちとの出逢いが生まれる、画商にとっては玉手箱のようなもので、過去何度も足を運んだイベントなのです。
2008年、私はスタッフと共にこの祭典に参加するためにニューヨークに入りました。久しぶりの緊張感。全身が触角となって様々な作家の作品を吟味していきます。なんといっても参加ギャラリー数だけで800軒を超え、限られた3日間の中で見ていくのですから。想像するだけで鳥肌がたち、目まいがし、そして何度もお腹がすいてしまうぐらい、一日中動き回る訳です。
そこで出会ったのがスティーブ・ホールマークでした。しかも初日に作品購入を作家と約束し、契約を取りつけてしまったのです(数あるブースの中からスティーブ・ホールマーク氏の作品を探したのは当社の金子でした。あなたは偉い!!)
それぐらいのインパクトと感動がありました。
「何が????」
なんと!使われている素材は「木」なんですと。どう見てもガラスにしか見えなかったものが近くによると本当だ…“年輪”が見える。しかもすべての作品が絵画ではあまり見ることのできない鮮やかな色合い、どうやって着色しているんだろう?
着色は着色でも自然のお花や葉っぱから色を抽出し、その特殊な液体の中に3~5ヶ月間、木を漬け込み染み込ませ染色するとのこと。感動です。“これぞ本物のアートだ!”
しかも素材の特性を熟知し、作品制作に於ける根気、そして作品の完成品に対する“計画性”と“創造性”がなければこのような偉大な材料を相手に作家が戦えないな…と感じさせられました。
作家はアリゾナのセドナ在住。皆さんもご存じ、世界で一番「パワースポット」が集まるエリアの中心にアトリエがあるのです。各作品に使われている木たちはなんと1000年以上も前のものばかり。中には化石化してしまい今にも壊れそうなものからまだまだ十分なエネルギーを秘めてそうなものまで…。
なんとスティーブ・ホールマークの自宅の近所に国立公園があり(といっても広さが半端なものではありませんが、日本の田舎にある山が10以上はすっぽり入るような広大な公園です。)そこに自由に入ることができ、ほぼ毎日、数千年前の木たちとの出会いを求めて素材を捜し歩いているのです。
ステーブは全身でスピリチュアルのパワーを感じとり一番自分の相性に合いそうな木たちとしか会話しません。その数少ない出会いが実ったものだけしか彼は手に取りません。そして一気に自分のイマジネーションが爆発し、木たちと納得がいくまで会話をし徹底した作品管理のもとに一点ものの希少な作品として何千年も眠っていた木たちが彼の手によって永い眠りから目覚めるのです。緊張の瞬間です。
彼は何度も私にこう話してくれました。
この木たちが目覚める瞬間が作家としての生きがいを感じる時。作家として生きていくためには時として命を懸けてでもやり遂げないといけないという使命感をもつこと。なぜならばこの偉大な自然からすれば80年程しか生きられない人間たちを温かく見守りながらより同じ形を保っていこうと努力が出来る木たち。
この生き物を私は絶対に超えることが出来ない、永遠に朽ちることなく生きていくような気がする。なぜならばそれが神の木(スピリチュアルウッド)なのだから。尊敬(リスペクト)を超えた仲間である。
彼と出会えたことに本当に感謝してます。作品に対する熱意をお持ちの作家さんたちはこれまでにも沢山出会いました。そしてその中からプロとして生きていらっしゃる方々も現在契約をいただきお付き合いをさせて頂いてます。が、しかしここまで自然の歴史を重んじ、ある時は命を懸けてでもアートにしようと戦い続けている作家は私の画商人生の中でも初めてのものでした。
本気の度合いが違います。彼の作品と向かい合うと、ひしひしと心に刺さってくるものが沢山あります。幸せ(ハピー)、静寂(カーム)、葛藤(サファー)、希望(ホープ)そして愛(ラブ)etc。私自身これらの作品と出会うことができたこの2年半もの間、かなり大きな影響を与えられました。
しかし長い長い時間が過ぎたものです。すべての作品が各コレクターの手に渡り旅立っていきました。新作の依頼をお願いしようとメールを送ったところ全く返信が無く、分かってはいましたが連絡ぐらいは欲しいものです…(-_-)/~~
そして…約2年近くも経ってしまったのです。やはり無理かな~素材に気を使う気持ちも理解できるし、相性の合う仲間が見つかるまでは作品作らないしな~。しかし待つこと2年、私もよく待てたものだ。他に探すにも彼以上のスピリチュアルウッドの彫刻家は見つからないし。仕方なく月2-3回のペースで作品依頼のメールを送っていたのです。
すると!先日メールが届きました!遂に!!!!
「久しぶりお元気ですか?かなりメールもらったようでありがとう。返信できませんでした。毎日毎日、偉大な自然の中で大先輩である木たちと会話をしてましたがなかなか縁を感じる出逢いがありませんでした。
しかし遂に、何本かの巨大な仲間に出会うことができ、これから新作として仲間を増やしていこうと思いますが、作品欲しいですか?」
当たり前ではないですか、何年待ったと思ってるんですか!スティーブさん!ください!
が、しかし返信は「ごめんなさい。家内がメール確認したところ、世界中のギャラリーから発注が来ていて、いつ頃日本に送れるかわかりません。」
ガーン!!こうなればネゴシエーター(交渉人)に徹するしかありません。他のギャラリーに負けてなるものか!FCAの底力を見せてやりまっせー。ということで私は、
「了解しました。普通の作品はいりません。本当にフツーの作品はいりません。スティーブさんが絶対これだという新しい企画の作品しかうちは取り扱わないので、それが出来るまではご遠慮いたします(かなり強気に出ましたが内心は夜寝れませんでした。どうしょう…また連絡入らなくなったら…)」
すると翌日に早速返信メールが。今回は早いです☆
実は、かなり苦心した内容のものが頭の中にひらめいて形になりそうなんだ!ということです。
家内から、“FCAからの新作打診メールが他のギャラリーのメールの数の数倍。こんなに熱心に連絡くれているのだから特別な新作は一番に日本に譲ったら…”と言ってくれたそうなんです。材料が特殊で数が無い為、すべてのギャラリーには分けられないとの事。ロビンさん(奥様)本当に有難うございます。助かりました。しつこくメールを送った甲斐がありました。粘り勝ちですか!
FCAの企業理念にもあります。“粘り粘って粘り続ける。最後まで自ら諦めない。”いまここでこの精神が生きてきたんです。しかしかなり焦らされたもんでした。
先日、税関を無事通り、作品達とご対面。スティーブが我々を焦らせた理由が、その作品を見た瞬間「納得」できました。おっしゃる通りです。これは数多くはできません。しかも、染色もカットもコーティングも技術面でかなり向上していらっしゃる。何とも言えない自然から抽出した色合い…見ているだけで引き込まれていきます。
先日アクリルのチューブに触る機会がありましたが、この作品と同じ色を作ることは絶対不可能です!今回、使われている木は、周りの地層から見て1200年から1500年前のものらしいのです。触れるだけで感動です。何十倍も先輩なのに妙に落ち着きます。その日は誰もいない事務所で“一人観賞会”をし、気が付けば2時間も経っていました。私にしては近年めずらしく鑑賞にこれほどの時間を費やしてしまいました。
「なぜかって?」それは“スティーブの粋な計らい”により、信じられないような企画が作品の中に見て取れたからでした。
本当にロビンさん、スティーブさんありがとうございました。長い画商人生の中でもかなり稀な経験をさせていただきました。そして貴重な作品達をまず日本に分けていただき有難うございました。時間が合えば必ずこのお礼はセドナにお邪魔し直接させて頂きたいと思ってます。
しかし何度見ても本当に美しい…ひしひしとパワーを感じます。これを鑑賞していると日頃の悩みなどが、ちっぽけに感じたりもします。本当にセドナのパワースポットは本物かもしれない…。あー自分の部屋に飾りたい。
ただ今このレポートを書きながら一つ大きな悩みがあります。それは「この作品達をいつ社員さんたちに見せようかなー?多分、触角持ってるからパワーもらって一時は仕事が手につかないかもなー?」という実は大きな悩みなのです。会社にとっては重大な重大な悩みですよね。ここだけの話ですが…。
フジムラコンテンポラリーアート TAKESHI FUJIMURA