FUJIMURA CONTEMPORARY ART. 2012年3月の企画は、吉野公賀(よしのとものり)画伯の『絆シリーズ』全11作版画初公開です。昨年、縁あってお付き合いが始まった吉野公賀画伯は、以前のブログでもご紹介した通り、ほとんどの視力を失いながらも絵画に全力を注ぐ若きアーティストです。
今回、その吉野公賀画伯が長年に渡り温めてきた作品の版画化が決定!全11作から成る作品は、『絆シリーズ』と名付けられました。
そのシリーズ名は、東日本大震災後、全国で度々耳にするようになった言葉でもあります。我々が、人と人との関わりに強く関心を持たざるを得ない環境に置かれ、失うものが多い中でも、学んだことの多い1年でもあったかと思います。実は、この出来事以降『絆』という言葉は強く意識していました。私共がギャラリーとして「何が出来るのか?何をすべきか?」…それをいつも考えながらの毎日でした。
そんな中、私共は吉野公賀画伯と出逢う事になります。その日まで、私達は一度もハンディを持ったアーティストとお付き合いしたことはありませんでした。理由は何もありません。意識した事すらありませんでした。しかし、吉野公賀画伯と出逢ったことにより、人として考える事の深さ、心の温かさ、人との関わりの重要性…など改めて、“アートを通して感じること”というより、“人として感じる何か…”のようなものが、その後の我々を突き動かすことになっていきます。不思議なものです。
吉野公賀画伯は、ご自身の経験から、周りの人の助けがなければ今の自分はないとおっしゃいます。
その昔、画家になりたての頃、まだそれこそアーティストという名の確立ができていない頃、『絆プロジェクト』 という名のプロジェクトを立ち上げています。それは何かというと、自分の絵画の売上の一部を寄付に充てる為のプロジェクトだ…とのことなのです。
しかしながら、まだ駆け出し。病気も今後の回復が見込めず、悪化の可能性まで秘めている先の見えないそんな頃、すでに「寄付」というものに大きく心が傾いていたそうです。
画伯曰く、「たいした売上も出せないのに寄付なんて言うのもお恥ずかしいお話しなのですが…」と、当時を振り返ります。「でも自分は多くの人に助けられてここまできたのだから、もし今の自分ででも出来る事があるならば、全力を注ぎたい!」とも。
我々は、このような吉野画伯のいきさつを知り、思いを伺い、また仕上がっていく作品の一枚一枚を眺めながら、『絆シリーズ』 という名が最もふさわしいのだろう…という結論に至りました。今回のプロジェクトは、画家だけが考えたものでもなく、画商である我々が考え仕掛けたものとも違う、企画です。画家、そして、画商の両者が長い時間をかけて話し合い、考え、まとめあげていったプロジェクトなのです。全11作の続きと、この企画についてのご案内は次回のブログに続きます。
また、この作品の発表の場となる FUJIMURA CONTEMPORARY ART.では、全11作全てご覧頂けるように2012年3月1日(木)~展示いたします。1ヶ月間の企画です。どうぞお見逃しないよう、お早めに足を運んで頂ければ…と思います。